コミュニティー考現学第1回「タウンコミュニティーのふるさとを訪ねて」:デザインショップまちや

英国における発祥の地を訪ねる=Windmillhill CITYFARM

green gate
green gate

英国にはシティーファームと呼ばれる場所がある。これは都市生活者に野菜づくり、園芸、家畜の飼育などを通して自然や生命との関わりを今一度見直し、生活を、人生を真の意味で豊かにしていこうというムーブメントである。そして、そこでの活動は地域コミュニティーづくり(地域コミュニティーの再生)にとっても、重要な意味をともなっている。英国におけるシティーファームのような活動は、コミュニティーガーデンという名称で世界的にも見ることができ、例えばニューヨークにおいてはおおよそ2,000ヶ所のコミュニティーガーデンが人々の交流の場となっているという。ちなみに、シティーファームとコミュニティーガーデンの違いは、前者には家畜がいるということぐらいだ。

今回は英国におけるシティーファームの発祥の地といわれるWINDMILL HILLという町を訪ねた。WINDMILL HILLはEASTONと同じブリストル市の郊外住宅地。市の中心部からバスに乗り15分程度でいくことができる。アンケートをとりながら丘陵地に形成された町を少し歩いてみた。決して高級住宅街ではないが、行きかう人や街並みの印象からすると、中流階級者むけの住宅地といった雰囲気だ。エリザベス・パークという広い公園があり、すばらしい眺望を楽しめる。子育てにはもってこいの環境だ。

organic cafe
Windmillhillの住宅街
ウィンドミルヒル・シティーファーム(Windmill Hill City Farm)への行き方:
by電車:「Bristol TM」駅の次の「Bedminster」駅下車 「Bristol TM」駅に戻るように線路沿いに歩いて5~6分。左手にCity Farmが見えてくる。 By徒歩:「Bristol TM」駅からAVON川を超えて、YORK ROADに入りWHITEHOUSE STREETに左折すると工場地帯を通り抜けた一角にある。徒歩約17~18分。初めての場合は少しわかりづらい。行きはタクシー(4ポンド)で行って、帰りを「Bristol TM」駅まで歩いて帰るのがおすすめ。

単なる市民農園ではなかったWindmillhill Cityfarm

イーストンコミュニティセンター
「あなたの助けが必要」というカラフルなサイン

目的のウィンドミルヒルシティーファームは、丘の麓にある「Bedminster」駅から徒歩5分ほどのところにある。(ブリストルTM駅からも徒歩15分でいくことができる。タクシーだと4ポンド)イーストンで取材の時間をとりすぎた我々がファームに到着したのは午後5時をすでにまわっていた。あたりはすでに薄暗くなりはじめていた。事前にアポイントメントをしていなかったのだが、建物から出てきた大柄の男性をつかまえて事情を話すと、男性は困った顔をしながらも、「仕方ない。せっかくだから」といった様子で施設を案内してくれることになった。彼の名前はジョン。このシティーファームでスタッフとして働いているらしい。「ここで飼っている家畜はシティーファーム内のショップで精肉としても販売しているので、かわいそうだから名前はつけないんだ」と寂しそうな顔をみせる、優しい人だった。

さて、Windmill Hill City Farmの紹介をしよう。ここは1976年に市のトラック駐車場建設予定地だったところを住民の反対運動によって計画を白紙撤回させ、住民が望んだ都市の中の「生きた農場」を住民の手によってつくりあげていった歴史をもつ。小規模酪農、菜園活動を中心に、利用者や住民の憩いの場としてのカフェ、安全な食を提供するオーガニック食品ショップ、誰でも利用できる託児所、セミナーやサークルの活動の場となっている各種コミュニティー施設(セミナールーム、クラフ トルーム、サッカーグラウンド、パーティースペース、キッズプレイグラウンド)などが整備されている。また、フードフェスティバルなどのイベントや各種 セミナーなどのアクティビティも充実している。ここは単なる市民農園を超えて地域コミュニティーの重要な拠点として機能していることがよく理解できる。「現在70名のスタッフで運営している」とのこと。地域の雇用創出にも貢献しているということだ。

ジョンさん
案内をしてくれたジョンさん
壁画
朝から夜まで人々が集まってくる仕掛け

多角的な運営によって様々な人々が来場し、経営の安定化につながっている

イーストンコミュニティセンター
駐車場。バザーなども開かれる

一般的にシティーファーム/コミュニティーガーデンの運営経費は、その多くを住民・チャリティ財団・企業からの寄付金によってまかなわれている。しかし、ここWindmill Hill City Farmは、経済的に自立した運営を目指すため、オーガニックショップやカフェの運営、託児所事業、セミナー運営、施設の貸し出し(ex.グラウンド照明点灯時12ポンド、通常時8ポンド)などの事業を展開している。中でも広い面積をもつ託児所事業は子育てファミリーの多い地域柄もあるのか利用者も多く、経営を大いに助けている*1。事業全体の売上がどの程度シティーファームの経営に貢献しているのかは不明だが、菜園、酪農という基本活動を軸とした多角的な展開が、世代を超えた多くの地域住民のシティーファームへの関心と参加を生み出し、結果的に経営的にも貢献している。いわゆるコミュニティビジネスのひとつのモデルケースといえよう。多くの視察が訪れることを見ても、参考になることが少なくない*2。

イーストンコミュニティセンター
菜園ゾーン
イーストンコミュニティセンター
CITY FARMは家畜もいる
*1::英国は小学校からは公立だが、それまでは公的なサポートはない。多くの家族は10万円以上の金額を託児や保育に費やしているという
*2::とはいえ、このような多様な活動を行っているシティーファームは稀ではあるらしい。

小さな規模で開催される各種セミナー

ファーム・ショップからカフェテラスにつながる廊下の壁に、ここで行われているセミナーの一覧表とポスターを見つけた。
ステンドグラスづくり、テキスタイルづくり、ジュエリーメイキング、スペイン語講座、太極拳、ヨガ、オーガニックガーデニング、コンピュータ入門、フォト ショップ講座、デジカメ入門など、10月度は10の講座が開かれている。ここでのセミナーは趣味的なものばかりでなく、職能訓練的な目的も担っている。内容を確認しようとレセプションに行ってみると、60歳後半の女性が講座リストを手になにやら質問をしていた。「私も同じリストがほしいのだが」の言うと、笑顔でセミナーリストを手渡してくれた。人気の高い講座を聞いてみると、「ヨガ、コンピュータ入門、水彩画が人気ですね」とまたしても笑顔で応えてくれた。資料をみると運営基本方針が次のように記されていた。「15人以内の小規模でフレンドリーな運営をします」。講座は一部を除いてどれも有料で、金額は10回セミナーで47.5ポンド。パソコン系は55ポンドとなっている。どれも1回単位でも参加できる。開催曜日・時間はまちまちではあるが平日の午前中と夜7-9時に行われるのが一般的。土日の開催は見当たらなかった。運営は WEA(Workers Educational Association)という団体が一括しておこなっている。文字通り職能訓練のための団体だ。問い合わせ・予約もWEAに電話するようになっている。

参加者募集チラシ:planeteaston
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<再訪>平日の朝は、お母さんたちの井戸端会議の場

ロバート氏
菜園の中が散歩道

ジョンに施設を案内してもらったものの、初めての訪問は夕方すぎだったので、昼間のシティーファームを見るために後日再訪した。(昼間の写真は再訪時に撮影したものです)
あいにく曇り空であったが、心配された雨はやんでいた。ブリストル駅からタクシーに乗り5分。シティーファームに到着だ。5日前に訪ねたときはあたりが暗くなっていたのでわからなかったが、シティーファームは石材、木材、自動車修理、クリーニング、などの中小規模の工場が集まるいわゆる工場団地のような地域に隣接して計画されていた。ブリストル駅から徒歩やタクシーで行くと工場のブロックを通り抜けていくのでよくわかる。ただ、騒音や臭いを伴うような工場 は見あたらなかった。
シティーファームに11時すぎ到着。そこには思いがけずにベビーカーにのった子どもを連れたお母さんたちを中心に多くの人で賑わっていた。シティーファームを一回りしてみた。お茶とクッキーを口に運びながらオーガニックカフェでおしゃべりをたのしむ人、菜園内の散歩を楽しむ母と子、家畜の前を離れない子どもたち、コンピュータルームでインターネットに夢中の男性たち、ファーム・ショップでオーガニックパンを購入するおじいさん、そしてシティーファー ムで働くボランティアの人たち。ここは、地域の住民たちにとってなくてはならない場所なのだろうと感じた。決して立派な施設があるわけではない、いわんや建築家にとっては取るに足らない施設であろう。しかし、コミュニティー形成を図る上で大切な何かを無言で教えてくれる、私にとっては玉手箱のようなところだった。

ロバート氏
Windmillhill Cityfarm